2025年3月22日~25日に開催されたCAADRIA2025*1において、デザイン系の井上智博さんが主要メンバーの一人として企画・講師を務められ、同じくデザイン系の田井則一さんが技術サポートで参加されましたワークショップ「Ceramic Walls AI」が「BEST WORKSHOP AWARD – RUNNER UP」に選出されました。
6月30日(月)まで、本ワークショップで制作されたセラミック壁とその制作プロセスが、京都工芸繊維大学 松ヶ崎キャンパス東1号館 1階に展示されていました。写真はクリックで拡大されます。ぜひご覧ください!
このたびの選出にあたり、お二人にお話をお聞きしました。
―― いちばんの見どころをお教えいただいてよろしいでしょうか。
井上 一つひとつ形や釉薬*2の色味が異なる50枚の建築タイルが整然と並ぶ壁面は、まさに圧巻の仕上がりです。その多様さと美しさが、このプロジェクトの最大の見どころだと思います。
田井 プロシージャルデザイン*3を用いて形状や色彩を生成し、柔軟なカスタムデザインを可能にしました。
―― ありがとうございます、一方、苦労した点もあったのではと想像されます、よろしければ教えてください。
井上 通常、建築タイルは量産を前提としており、多くは熱プレスによって成形されます。しかし今回は、すべてセラミック3Dプリンタによる一品一品の出力でした。そのため、素材の違いや乾燥による反りの影響が大きく、それをいかに補正するかが非常に難題でした。さらに、ワークショップの前日までに50枚すべてを焼成・納品する必要があり、極めてタイトなスケジュールのなかでの奮闘となりました。
田井 セラミック3Dプリンタで出力した造形の「素焼き」「本焼き」の工程は、含水量、乾燥時間、置き方などにより結果が異なるため苦労しました。
―― 「Ceramic Walls AI」の「AI」の部分にやはり目が留まりました。AIをどのように使われたのか、教えていただいてよろしいでしょうか。
井上 形態をプロシージャルデザイン、造形をセラミック3Dプリンタ、造形されたあとの仕上がりの塗装の部分をAIを使ってシミュレーションしています。たとえば 「Toropical Wall ワード」と打ってみたときにそのWordから、ネット上での色味を拾ってきて、それに沿うタイルの色味がジェネレートされます。そしてかつ、その色味をだすために必要な釉薬の調合の数値を出力できるようにしています。釉薬の調合の数値はその裏でたくさんの釉薬の実験を実施して色情報を蓄積しており、そこからとりだしています。そのシステム自体も革新的であり評価されたポイントでもあります。
―― 確かに、すごい活用事例です、評価されたこと、うなずけます!最後に、「Ceramic Walls AI」の今後の展望、意気込み等ございましたら、ぜひお願いします!
田井 私としては技術サポートとして携わっただけですので、井上さんからお願いします。
井上 今回のプロジェクトで得た知見をさらに発展させるべく、現在は各種助成金の申請に取り組んでいるほか、SIGGRAPHなどの国際ジャーナルへの投稿も進めています。こうしたアカデミックな活動と並行して、実社会での実装にもつなげていけるよう、今後も積極的に取り組んでいく予定です。
*1アジアにおけるCAAD(Computer-Aided Architectural Design)の教育と研究を推進する国際的な学術団体が、毎年開催している国際会議です。
*2釉薬(ゆうやく)とは、陶磁器の表面を覆うガラス質の膜のことです。
*3プロシージャルデザインとは、手作業でモデルやテクスチャを作成するのではなく、数式やアルゴリズム、ルールに基づいて自動的に生成するデザイン手法のことです。これにより、複雑な形状やパターンを効率的に作成したり、手作業では難しい大規模な環境を生成したりすることが可能になります。具体的には、プロシージャルモデリング、プロシージャルテクスチャ、プロシージャルアニメーションなど、様々な分野で応用されています。
プロシージャルデザインは、ゲーム開発、映画制作、建築デザインなど、様々な分野で活用されており、今後ますます重要になっていくと考えられます。
<関連>
- セラミック技法とAI駆動型デザインを融合し、カスタマイズ可能なセラミック壁を作るワークショップをCAADRIA2025で開催します – KYOTO Design Lab
- 展示「Ceramic Walls AI」開催のお知らせ – KYOTO Design Lab
上記リンク先にも掲載されております、本制作に関わったみなさまを改めてご紹介いたします。本当におめでとうございました!
*Instructors*
石津優子[株式会社GEL]
井上智博[京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab]
堀川淳一郎[京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab]
*Contributor*
登尾育海[京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab]
*Participants*
Yixuan Liu
Yu Kato
Takafumi Tsukamoto
Nur Sipahioglu
Zewei Feng
Tamar Friedman
Tianyi Bo
Kaori Ueda
*Special Thanks*
潮桂子[陶芸家]
諏訪蘇山[陶芸家]
*Sponsor*
新井秀光[創新テック]
*D-lab Fabricators*
田井則一[京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab]
石田航平[京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab]
小牧遊太郎[京都工芸繊維大学]
松原胡桃[京都工芸繊維大学]
高田ほのか[京都工芸繊維大学]
市村ともか[京都工芸繊維大学]
山田啓一朗[京都工芸繊維大学]
田淵智彦[京都工芸繊維大学]
岡田萌々花[京都工芸繊維大学]
菊野慧美[京都工芸繊維大学]
本吉亮太[京都工芸繊維大学]
小早川瑛子[京都工芸繊維大学]